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東京地方裁判所 平成4年(ワ)23200号 判決

東京都新宿区大京町二二番地の五

原告

アキレス株式会社

右代表者代表取締役

中島貞夫

右訴訟代理人弁護士

安原正之

佐藤治隆

小林郁夫

右輔佐人弁理士

安原正義

東京都北区中十条三丁目三番一七号

被告

株式会社 石山製作所

右代表者代表取締役

石山舎人

右同所

被告

石山舎人

右両名訴訟代理人弁護士

遠藤安夫

主文

1  被告らは、文書又は口頭で、原告の製造、販売する自己放電式除電器(商品名アキレスノンスパーク)が、特許登録番号第一六六六五三六号特許権の発明の構成に該当するなど、原告が自己放電式除電器の製造、販売に関し、右特許権を侵害し、もしくは侵害しているおそれがある旨を需要者その他取引関係者に告知し、流布してはならない。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

主文同旨。

第二  事案の概要

本件は、不正競争防止法二条一項一一号、三条一項に基づき、原告の製造、販売する自己放電式除電器は、被告石山の有する特許権を侵害するものである旨の事実を告知し、流布する被告らの行為の差止めを請求するものである。

第三  基礎となる事実

一  原告は、靴、合成樹脂製品、静電気対策商品等の製造、販売を業とする株式会社であり、被告会社は除電器の製造、販売等を業とする株式会社であり、被告石山は被告会社の代表取締役である(争いがない)。

原告と被告会社は、いずれも静電気除去用の自己放電式除電器を製造、販売していて競争関係にあり、被告会社は、被告石山が経営し支配権を有する同族会社であって、原告は、被告石山とも実質的に競争関係にある(争いがない)。

二  被告石山は、特許登録番号第一六六六五三六号の、名称を「自己放電式除電器」とする発明についての特許権(出願日 昭和五五年七月一〇日、出願公告日 平成元年一一月二一日、出願公告番号 特公平一-五四八三九号、特許登録 平成四年五月二九日。以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」と、右特許出願公告公報を「本件公報」という。なお、出願公告後に、別紙「特許法六四条の規定による補正の掲載」と題する公報の写しのとおりの補正がされている。)を有しており、本件特許権の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載は、別添特許公報写しの特許請求の範囲の欄に記載のとおりである(争いがない)。

三  原告は、「アキレスノンスパーク」という商品名で自己放電式除電器(以下「原告製品」という。)を製造、販売しているが、被告石山は、被告会社代表者として、平成三年一二月頃、原告製品を部品として使用してコピー機などを製造、販売している機械メーカー多数社に対し、本件特許権が登録される予定であることを説明し、実施権設定契約の締結を申し込むよう勧誘すると共に、実施許諾されていない取引先から購入することは、取引先が特許権侵害に該当するので「貴社に納入がスムーズに出来ず貴社に御迷惑がかかることもあります。」旨説明する文書(甲五号証)を内容証明郵便により送付した。そのため原告は、平成四年六月五日付け内容証明郵便(甲七号証の1、2)により、右のような通知の撤回を被告会社に求めたが、被告石山は、被告会社代表者として同月八日付けの書簡で、原告製品を部品として使用している機械メーカー各社に対し、本件発明の詳細を説明するとの説明書(甲六号証)を同封配布し、その中で原告の自己放電式除電器の「現在構成の物は本特許発明による構成に該当するものが大部分であることは同業者間では公知の事実である。」旨告知した(甲六号証)。

また被告石山は、被告会社代表者として右のような行為をしたものであり、本件訴訟においても訴訟代理人を選任しながらも、自らも極めて熱心に訴訟活動を行い、別紙物件目録一ないし五記載の原告製品が本件特許権を侵害する旨を力説する態度に照らせば、被告会社の取引先や原告製品を部品として使用している機械メーカーに対し、原告製品が本件特許権を侵害するものである旨を口頭で陳述するおそれがある(弁論の全趣旨)。

四  原告製品の構成は、別紙物件目録一ないし五記載の構成にかかる部分及び各図面で表現されているものであり(以下、別紙物件目録一の構成に当たる原告製品を「原告製品一」ということがあり、原告製品二ないし五も同様である。)、具体的には、原告製品一は、別紙物件目録一の二(6)及び第4図に、原告製品二は、別紙物件目録二の二(6)及び第5図に、原告製品三は、別紙物件目録三の二(7)及び第4図に、原告製品四は、別紙物件目録四の二(7)及び第3図に、原告製品五は、別紙物件目録五の二(7)及び第2図にそれぞれ示されたとおりである(当事者間に争いがない。ただし原告製品の製法、即ち別紙物件目録一及び二の各二の(1)ないし(5)あるいは別紙物件目録三ないし五の各二の(1)ないし(6)に示された原告製品の製造工程に関する部分には、後記第四、一のとおり争点である。)。

原告が製造、販売する原告製品は、別紙物件目録一ないし五記載の構成のものが大部分であり、特に原告製品一、二が主力である(弁論の全趣旨)。

第四  主要な争点及び当事者の主張

一  原告製品は、どのような製造工程で製造されているか(争点一)。

1  被告らの主張

(一) 原告製品の製造工程について、原告が別紙物件目録一及び二の各二の(1)ないし(5)あるいは別紙物件目録三ないし五の各二の(1)ないし(6)に挙げる製造工程は事実に反する。

原告は原告製品を製造するに際し、金属板に相当する部材と柔性板に相当する部材との間に接着剤を入れ、接着剤が乾燥固化して流動性を喪失する前に柔性板に相当する部材の外面から手で直接(原告製品一、三)あるいはプレス作業により金属板を介して間接的に(原告製品二)加圧して組立てている(なお、この金属板に相当する部材と柔性板に相当する部材は、後記二1(一)において具体的に主張するとおりである。)。そのため、右加圧により、柔性板に相当する部材と金属板に相当する部材との問に隙間がなくなると同時に除電繊維群を柔性板に相当する部材がくるむようになり、これにつれて接着剤が除電繊維群の周囲から内部まで滲透するようになるという工程を踏んでいる。

そのことは、

(1) 被告らが入手した原告製品である「アキレスノンスパーク」を分解、検分したところ、使用されている接着剤はいずれも接着機能を有しており、固化していなかったこと、

(2) 原告主張の製造工程によれば、電極固定用粘着テープと化粧用粘着テープを剥離する方法により分解しても、電極は電極固定用粘着テープに接着されたままで、化粧用粘着テープに接着された状態で剥離されることはありえないはずである。しかし被告らが入手した製品の中には、電極固定用粘着テープから分離して化粧用粘着テープに接着された状態で剥離したものが存在したこと、その上、中には化粧用粘着テープの電極に面した側に電極に相似する加圧痕が印されているものもあったこと、

(3) 原告が主張する製造工程において、接着剤が、滲透、固化するまで放置するというのは、時間、経費を空費し、かつ十分な接着機能を接着剤に与えないもので、実用性がないこと、

(4) 市販されている原告製品の断面をマイクロスコープで拡大撮影した写真の状況、

などから明らかである。

(二) 原告は、原告製品の中間製品であるとして検甲一号証ないし検甲三号証を提出している。これらは接着剤が固化した状態で除電繊維群が固定されていて、その上に化粧用粘着テープなどが貼られていないものであるが、これらが実際の製品の製造過程においてできあがったものでないことは、除電繊維群を電極固定用粘着テープから剥離してみた検甲三号証には、除電繊維群の電極固定用粘着テープと接していた部分にも電極固定用粘着テープの表面にも接着剤が存在せず、除電繊維群と電極固定用粘着テープとの間に接着剤の滲透が認められないのに対し、原告製品の断面をマイクロスコープにより拡大した写真においては、除電繊維群と電極固定用粘着テープとの間に接着剤が存在していることが認められることから明らかである。

2  原告の主張

(一) 原告製品の製造工程は、別紙物件目録一及び二の各二の(1)ないし(5)あるいは別紙物件目録三ないし五の各二の(1)ないし(6)に記載のとおりである。

(二) 甲一二号証によれば、検甲三号証の剥離した除電繊維群の電極固定用粘着テープと接していた部分には、薄い接着剤層が認められるから、除電繊維群と電極固定用粘着テープの間に接着剤が滲透していたものであり、また被告らが提出するマイクロスコープによる拡大写真は、写真の実際の撮影状況によって、被写体の写り具合が種々異なりうるものであるから、被告らの主張はその立論の基礎を欠く。

二  原告製品は、本件発明の技術的範囲に属するか(争点二)。

1  被告らの主張

(一) 本件発明は、「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立ったことを特徴とした自己放電式除電器」そのものであって、経時的手段は構成要件とはなっていない。即ち、除電繊維群と接着剤を柔性板と金属板との間に入れてある構成であれば、本件発明の要件を具備している。そしてその柔性板の外面から加圧して組み立てられていればよく、経時的に加圧しようと、どのような手段で加圧しようと構わず、その加圧の程度も問わない。

本件発明の特許請求の範囲における「金属板」といううちの「金属」、「板」いずれの語も通常の用語に従ったものであり、その厚さ、硬さなどを限定していないことは特許請求の範囲の記載に照らし明白である。

原告製品一、三においては、化粧用粘着テープ5が本件発明の柔性板に、電極固定用粘着テープ2が本件発明の金属板に該当し、原告製品二においては、電極固定用粘着テープ2が本件発明の柔性板に、金属板6の一方が本件発明の金属板に該当し、原告製品四、五においては、化粧用粘着テープ5が本件発明の柔性板に、金属板7が本件発明の金属板に該当する。

(二) 原告製品は、争点一について被告らが主張するように、いずれも接着剤がまだ柔軟性を有している時点において、手により直接、あるいはプレス作業により金属板を介して間接的に、それぞれ力を加えて加圧し、これらによって除電繊維群を柔性板でくるむように包み、接着剤を滲透、固化させている。

よって、原告主張の原告製品は、いずれも本件発明の技術的範囲に属する。

2  原告の主張

本件公報の特許請求の範囲、発明の詳細な説明の各記載、本件特許権の出願過程における出願人被告石山の意見の表明などに照らせば、本件発明は、「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤を入れて、柔性板の外面より加圧して組立った」という経時的手段、製造工程を要件とするものであるというべきであるところ、原告製品一ないし五の製造工程から明らかなように、このような製造工程は原告製品にはない。

また原告製品一ないし三には、本件発明の構成要件である金属板に相当する構成がない。

したがって原告製品は、いずれも本件発明の技術的範囲に属しない。

第五  当裁判所の判断

一  争点一について

1  原告製品の大多数を占める原告製品一ないし五のうち原告製品一及び二は別紙物件目録一及び二の各二の(1)ないし(5)に記載の製造工程を、原告製品三ないし五は、別紙物件目録三ないし五の各二の(1)ないし(6)に記載の製造工程を経て製造されるもので、いずれも前記各二の(3)の工程で塗布ないし再活性化された接着剤を乾燥、固化させてから、その後の化粧用粘着テープを貼ったり、カセットでかしめたりする前記各二の(4)以下の工程に移るものであること、右(3)の工程を経た物の接着剤は、加圧しても多少の変形が生じる程度の柔軟性はあるが、これを外部から加圧した場合、流動して除電繊維群に滲透するほどの流動性は失っている(乙七号証の2、検甲一号証ないし検甲四号証、弁論の全趣旨)。

2  被告らは、右別紙物件目録一ないし五に記載の製品の製造工程部分を否定し、その根拠として、第四、一1のとおり主張する。

しかしながら、化粧用粘着テープの圧迫痕は接着剤が柔軟性を失った後に、化粧用粘着テープを手でその上に貼る際(原告製品一、三ないし五)、あるいは化粧用粘着テープを貼った上で、更にプレスで金属板をかしめる際(原告製品二)にも、除電繊維群が存在することによるそれらの痕跡が、化粧用粘着テープにつく可能性は十分にあるから、圧迫痕があることをもって前記認定をくつがえすことはできない。

また、原告製品に使用されている溶剤系の接着剤の場合、これが乾燥、固化したといっても、多少の柔軟性が残ることは、原告も自認するところであるが、これを越えて、更に原告製品において化粧用粘着テープを手で貼る際の圧力又はプレスによる圧力によって、除電繊維群を柔性板でくるむように包み、接着剤を滲透させた上で固化させているものとは認められない。

また、検甲三号証及び検甲三号証の剥離された除電繊維群を顕微鏡で拡大撮影した甲一二号証によれば、剥離した除電繊維群の背面には、接着剤が薄い層となって存在していることが認められ、これによれば、検甲三号証の右剥離部分は除電繊維群と電極固定用粘着テープの間に接着剤が滲透していたところ、除電繊維群を電極固定用粘着テープから剥離した際、右の滲透していた接着剤が除電繊維群に付着したまま、電極固定用粘着テープから剥がされたものと認められるから、被告らの検甲三号証についての主張はその前提を欠き失当である。

そしてマイクロスコープで、被告らが収集した原告製品一に対応する原告製品の断面を二五〇倍に拡大した写真、原告製品二に対応する原告製品の断面を五〇倍及び二五〇倍に拡大した写真(乙一〇号証添付写真1ないし3、乙一三号証添付写真4ないし11、乙一九号証添付写真6)によっても、これらから直ちに被告らが主張するように接着剤が乾燥して流動性を失う前に加圧がなされている事実を認められない。そればかりか、原告製品一の断面写真に相当する乙一〇号証添付写真1によれば、化粧用粘着テープと電極固定用粘着テープが除電繊維群を介することなく、接着剤のみを介して接している部分についても、相当の厚さの固化した接着剤の層が存在していることが認められるところ、接着剤が流動性を有する時点で加圧したとすれば、接着剤層は相当薄いものになるであろうことに照らすと、右の事実は、接着剤が均一に塗布されて乾燥し流動性を失ったのちに、化粧用粘着テープが接着剤層の上に貼られたことを示すものと解されるから、結局、前記1認定の事実にそうものである。

その他、前記1認定に反する被告らの主張にそう乙一一号証、乙一四号証、乙一五号証、乙一七号証ないし乙一九号証は、いずれもたやすく信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  争点二について

1(一)  本件公報の特許請求の範囲の欄の記載には、「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立つたことを特徴とした自己放電式除電器」と、本件発明では経時的手段、即ち製造工程が本件発明の構成要件となっているものと解することのできる記載がある(甲二号証の2)。

(二)  本件公報の発明の詳細な説明を見ると、本件発明の産業上の利用分野について、「この発明は静電気の除電器の金属板より除電繊維群の抜け落ちを防止した自己放電式除電器に関する」(本件公報一欄七行から九行)との記載、従来技術について、「従来の自己放電式除電器は第1図に示す如く金属板1と金属板2との間に除電繊維群(除電効果のある繊維を二本以上集合させたものを明細書で除電繊維群とかく)3と接着剤4とを入れ金属板の外面より加圧し乾燥(「乾焼」とあるのは「乾燥」の誤記と認める。)したものであるため除電繊維群の太さだけ金属板1と金属板2との間に透き間ができる、この透き間は空間であるため接着剤4がここに入りやすいので、ほとんどの接着剤がここに集り肝心な除電繊維群の内部まで滲透しにくいので除電繊維の内部にあたる除電繊維まで接着ができず、このところの除電繊維が抜け落ちこれが電子複写機内の高電圧加電部に入り込み短絡し電子複写機の機能をなくすることがある。又パイプの出口の外周に除電器の平面部を、わん曲に変形し取付るとき内側の金属板と外側の金属板との接着された位置がずれて除電繊維群の接着が離れて金属板より離脱する。」(本件公報一欄一一行から二七行)との記載、発明が解決しようとする問題点として、「この発明は金属板より除電繊維群及び除電繊維群中の一部の除電繊維の抜け落ちを防止することを目的とする。」(本件公報二欄一行から三行)との記載がそれぞれある。

そして、この従来技術の課題を解決するための手段として、「この発明は第2図に示すごとく金属板1と柔性板(薄い金属板、紙類、ゴム板、合成樹脂製板、布類、皮革類等のものを明細書で柔性板と書く)5との間に除電繊維群3と接着剤4とを入れ柔性板5の外面より加圧し接着する。」(本件公報二欄五行から九行)との記載があり、その作用として「柔性板5の外面より加圧するので柔性板5と金属板1とは第2図に示すごとく二者間に透き間がなくなると同時に除電繊維群3周囲を柔性板5でくるむようになり、これにつれて接着剤4が除電繊維群3の周囲より内部まで強力に滲透させるので除電繊維群3の柔性板5と金属板1との間にある部分は一体となり固定されるので除電繊維群の離脱及び除電繊維群中の除電繊維の抜け落ち等が出ない」(本件公報二欄一一行から一九行)とする記載がある。

また、発明の効果として、「この発明は以上説明したように柔性板5の外面上をゴムローラー又は鉄ローラー等により加圧すると柔性板5が除電繊維群の柔性板5と金属板1との間にある部分の周囲を囲むと同時に除電繊維群5の内部に接着剤4が圧入され固る。」(本件公報三欄一五行から一九行)との記載がある。

(三)  本件発明の特許出願公告に対し、平成二年二月二一日付けで原告が申し立てた特許異議についての審理において、原告が、自社が本件特許出願当時既に「ノンスパークSS」を製造、販売して公然実施していたところ、右製品は、アルミ板と両面接着テープである薄いアルミテープとの間に金属繊維束を挟み、アルミテープの接着剤を用いて固定した構造を有し、そのアルミ板は本件発明の金属板に、アルミテープは本件発明の柔性板に、アルミテープの接着剤は本件発明の接着剤に、製造する際にアルミ板とアルミテープとの間に金属繊維束を挟み込んで固定するために行う加圧が本件発明の加圧に該当するから、本件特許出願は、特許法二九条一項一号、二号により拒絶を免れないとの趣旨の主張をした(乙一号証、乙二号証)。

これに対し、被告石山は、前記(一)の本件公報の特許請求の範囲の記載、前記(二)に認定した発明の詳細な説明中の作用についての記載を引用して、本件発明の特徴を説明するとともに、原告の引用した「ノンスパークSS」は、両面接着テープに付着されている表面接着剤が外面加圧により他へ移動することがなく、金属繊維束の内部にまで滲透するとは到底考えられないことを根拠に本件発明と原告の引用した発明とは構成も作用効果も異なることを強調した(甲三号証の1ないし5)。

その結果、特許庁審査官も被告石山の主張を認めて、平成三年八月二三日、異議申立人である原告の引用した文献には本件発明の構成要件である「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立てた」点について記載されてなく、本件発明はこの点により明細書記載の作用効果を生ずるものであることを理由に、原告の特許異議の申立ては理由がないと決定して、本件特許権について特許査定をした(甲四号証)。

2  右1に認定した本件明細書の記載及び特許異議についての審理の経緯によれば、本件発明はまさに「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立つた」という製造工程によって製造され、その「加圧」の結果、柔性板と金属板との透き間をなくして除電繊維群の周囲を柔性板でくるむようにするとともにこれにつれて固化していない接着剤が除電繊維群の周囲から内部まで十分滲透されて、そのために除電繊維群3の柔性板5と金属板1との間にある部分は一体となり固定されるので除電繊維群の離脱及び除電繊維群中の除電繊維の抜け落ち等が出ないという作用効果が発揮される点に新規性、進歩性が認められ、特許権として登録が認められたものであるから、この「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立つた」という製造工程に相当する部分は本件発明の要件であり、右製造工程により製造された物として特定されるものが本件発明の技術的範囲に含まれるものである。

そして、本件公報の特許請求の範囲に記載された「加圧」とは、柔性板と金属板との透き間をなくして除電繊維群の周囲を柔性板でくるむようにするとともにこれにつれて固化していない接着剤が除電繊維群の周囲から内部まで十分滲透されるような加圧を指すものと認められる。

3  被告らは、本件発明が対象とする発明は「自己放電式除電器」という装置そのものであって、その装置は、柔性板、金属板、除電繊維群及び接着剤とから構成されるものであり、「…入れて…加圧して」の用語は、「組立つた」という構成において接着剤及び柔性板の位置関係と状態とを明確にするものであって、経時的手段でもなければ製造工程を要件とするものでもない、加圧が必要であるとしても要は柔性板の外面から加圧してあればよくその加圧の程度も問わないものであると主張するが、右1、2に認定判断したところに照らして採用できない。

4  原告製品一ないし五には、種々のタイプがあるものの、いずれも電極固定用粘着テープ(原告製品一ないし三)又は金属板(原告製品四、五)上に除電繊維群からなる電極を配列し、その上から電極固定用粘着テープ又は金属板と電極に接着剤を塗布しあるいは金属板と電極に予め塗布された接着剤を再活性化し、接着剤を滲透させた後、これを乾燥させて接着剤の流動性が失われて電極固定用粘着テープ又は金属板と電極が接着された後に、各別紙物件目録の各二(4)以降の工程、即ち被告らが加圧に当たると主張する工程が行われているものであることが明らかである。

そうしてみると、原告製品一ないし五には、本件発明の構成要件である「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立つた」という点、即ち「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて」、「加圧」即ち柔性板と金属板との透き間をなくして除電繊維群の周囲を柔性板でくるむようにし、それにつれて接着剤を除電繊維群の周囲から内部まで十分滲透させるように圧力を加えるという工程がなく、このような工程により特定される構成、即ちそのような加圧によって柔性板と金属板との透き間をなくして除電繊維群の周囲を柔性板でくるむようにし、それにつれて接着剤を除電繊維群の周囲から内部まで十分滲透させたという構成を欠くものである。

5  被告らは、乾燥しても接着剤には多少の流動性が残っており、原告製品一におけるような化粧用粘着テープの上部からの加圧、あるいは原告製品二におけるようなカセット上部からの加圧によって、接着剤が除電繊維群の内部に滲透しているとして、本件発明の構成要件を充足すると主張する。

しかし、そのような段階では、接着剤は外力に応じて多少の変形をすることはあるものの、原告が本件発明の出願過程において強調した除電繊維群の内部に滲透するような流動性はない状態にあると認められることは既に認定したとおりであって、被告ら主張の事実をもって本件発明の加圧の要件を充足するものと認めることはできない。

三  以上によれば、原告製品は本件発明の技術的範囲に属しないと認められるから、競争関係にある被告らが「原告製品が本件特許権を侵害する」旨の書面の配布及び口頭での陳述をすることは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知、流布に当たるものと認められ、原告の本訴請求は理由がある。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官櫻林正己は転補のため署名、押印できない。 裁判長裁判官 西田美昭)

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告

〈12〉特許公報(B2) 平1-54839

〈51〉Int. Cl.4H 05 F 3/04 A 46 B 3/02 G 03 G 21/00 識別記号 116 庁内整理番号 H-8834-5G 8206-3B 7428-2H 〈24〉〈44〉公告 平成1年(1989)11月21日

発明の数 1

〈54〉発明の名称 自己放電式除電器

〈21〉特願 昭55-94345 〈65〉公開 昭57-19998

〈22〉出願 昭55(1980)7月10日 〈43〉昭57(1982)2月2日

〈72〉発明者 石山舍人 東京都北区中十条3丁目3番17号

〈71〉出願人 石山舍人 東京都北区中十条3丁目3番17号

審査官 長沢俊一郎

出願人において、実施許諾の用意がある。

〈56〉参考文献 特開 昭53-144295(JP、A)

〈57〉特許請求の範囲

1 柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立つたことを徴徴とした自己放電式除電器。

発明の詳細な説明

(イ) 産業上の利用分野

この発明は静電気の除電器の金属板より除電繊維群の抜け落ちを防止した自己放電式除電器に関する。

(ロ) 従来の技術

従来の自己放電式除電器は第1図に示す如く金属板1と金属板2との間に除電繊維群(除電効果のある繊維を2本以上集合させたものを明細書で除電繊維群とかく)3と接着剤4とを入れ金属板の外面より加圧し乾焼したものであるため除電繊維群の太さだけ金属板1と金属板2との間に透き間ができる、この透き間は空間であるため接着剤4がここに入りやすいので、ほとんどの剤着剤がここに集り肝心な除電繊維群の内部まで滲透しにくいので除電繊維の内部にあたる除電繊維まで接着ができず、このところの除電繊維が抜け落ちこれが電子復写機内の高電圧加電部に入り込み短絡し電子複写機の機能をなくすることがある。又パイプの出口の外周に除電器の平面部を、わん曲に変形し取付るとき内側の金属板と外側の金属板との接着された位置がずれて除電繊維群の接着が離れて金属板より離脱する。

(ハ) 発明が解決しようとする問題点

この発明は金属板より除電繊維群及び除電繊維群中の一部の除電繊維の抜け落ちを防止することを目的とする。

(ニ) 問題点を解決するための手段

この発明は第2図に示すごとく金属板1と柔性板(薄い金属板、紙類、ゴム板、合成樹脂製板、布類、皮革類等のものを明細書で柔性板と書く)5との間に除電繊維群3と接着剤4とを入れ柔性板5の外面より加圧し接着する。

(ホ) 作用

柔性板5の外面より加圧するので柔性板5と金属板1とは第2図に示すごとく二者間に透き間がなくなると同時に除電繊維群3周囲を柔性板5でくるむようになり、これにつれて接着剤4が除電繊維群3の周囲より内部まで強力に滲透させるので除電繊維群3の柔性板5と金属板1との間にある部分は一体となり固定されるので除電繊維群の離脱及び除電繊維群中の除電繊維の抜け落ち等が出ないので上記のような短絡事故が発生しない

(ヘ)実施例

金属板1としてアルミニユーム、銅、鉄等で厚さ0.2~10mm、巾10~50mm、長さ50~1000mm等を各々使用した。

柔性板5

薄い金属板としてアルミ箔、銅箔等で厚さ30~150μm、巾9~49mm、長さ50~1000mm等各々使用した。

合成樹脂として厚さ100~1000μm、巾、長さは薄い金属板と同じ

ゴム板・厚さ20~1000μm

紙・厚さ50~500μm

布・木綿、麻、絹、合成繊維等厚さ50~500μm

皮革・ナメシ皮厚さ50~500μm

除電繊維群として

カーボン繊維 太さ7μm×6000本を1束

ステンレス繊維 太さ12μm×100本を1束

ニカロン繊維 太さ9μm×500本を1束

アモロフアス繊維 太さ20μm×49本を1束

以上を金属板1に間隔1~20mmで取付たもの。

取付形状として平面並に外径50mmのパイプ等の外面に合せて取付た。

(ト) 発明の効果

この発明は以上説明したように柔性板5の外面上をゴムローラー又は鉄ローラー等により加圧すると柔性板5が除電繊維群の柔性板5と金属板1との間にある部分の周囲を囲むと同時に除電繊維群5の内部に接着剤4が圧入され固る。除電繊維の無い部分は柔性板5と金属板1とは接着剤4により密着するので金属板1より除電繊維群3及び除電繊維群中の一部の除電繊維の抜け落ちすることがない。又パイプの出口の外周にこの発明の除電器の金属板の平面部をパイプの外周に合せてわん曲して固定しても除電繊維群は金属板に変化なく密着している。除電繊維群の無い部分は柔性板が少し伸縮するくらいで互に密着している

(チ) 実験結果

この除電器を平面状で使用しているとき、被除電物体として複写紙B4を200000枚通過させたのち1本の除電繊維の抜け落も無かつたこの除電器を外径50mmの外周に合せてわん曲させ固定し、パイプに通水100時間後点検したが1本の除電繊維の抜け落も無かつた。

図面の簡単な説明

第1図は従来の自己放電式除電器の説明図の一部拡大図。第2図は本発明の一実施例の説明図の一部拡大図。

図中、1……金属板、2……金属板、3……除電繊維群、4……接着剤、5……柔性板。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第7部門(1) 特許法第64条の規定による補正の掲載 平4.8.31発行

昭和55年特許願第94345号(特公平1-54839号、平1.11.21発行の特許公報7(1)-62〔665〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載する。

特許第1666536号

Int. Cl.3H 05 F 3/04 A 46 B 3/02 G 03 G 21/00 識別記号 116 庁内整理番号 7028-5G 2119-3B 6605-5H

1 第3欄12~13行「取付形状…取付た。」を「取付形状として平面並に外径50mmのパイプ等の外面に合せて取り付けた。

尚、集束された金属繊維群3、3間の間隔が全く無い場合すなわち密接した状態にあつては、いくら柔性板5の外面から加圧しても柔性板5で金属繊維群3の周囲を有効にくるめないため、金属繊維群3、3間の間隔は、少なくともその金属繊維群の直径以上の間隔、具体的には少なくとも1mm以上(好ましくは1~20mm)の間隔で配設するのが良い。なぜなら、間隔1mm以下では金属板2と柔性板5との接着面積が小さすぎて柔性板5による金属繊維群3周囲の有効なくるみ作用が得がたく、かつ、放電電極相互間においては、20mmを最大として広いほど放電開始電圧が小さくなる換言すれば除電効果が良いからである。

また、本願明細書で言及されている接着剤とは、普通一般に使用される常套の接着剤であり、一時的に流動性があり接着後は流動性を失つて固化するものであれば、天然接着剤、合成接着剤を問わず何れでも使用できるものである。また、被接着体の材質に応じて各種の接着剤等を配合して使用できることは云うまでもない。」と補正する。

物件目録一

「アキレスノンスパーク」テープタイプ説明書

一、図面の説明

第1図は離型紙からなる電極配列用シート4に電極固定用粘着テープ2を貼着し、電極1を配列した状態を示す正面図、第2図は第1図のものの電極1を接着剤3で電極固定用粘着テープ2に接着固定した状態を示す正面図、第3図は第2図のものを裁断した場合の断面図、第4図は完成品の断面図である。

図番1は電極であり、ステンレス繊維、サンダロン糸、カーボン繊維等が用いられる。2は電極固定用粘着テープであり、アルミ粘着テープ、電極巻き付け面に合成樹脂をラミネートしたアルミ粘着テープ、両面粘着テープ、導電性両面粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。3は溶剤系の接着剤、4は離型紙からなる電極配列用シートでポリプロピレンラミネート紙、シリコンコート紙等が用いられる。5は化粧用粘着テープで、アルミ粘着テープ、合成樹脂基材の粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。X・Xは裁断位置である。

二、自己放電式除電器の説明

この製品は下記(1)ないし(5)の製造過程で作られた自己放電式除電器である。

(1) 離型紙からなる電極配列用シート4に、一定間隔をあけて電極固定用粘着テープ2をその粘着剤面で貼り付け固定する。

(2) その上に一本の直軽が五~五〇ミクロンの除電繊維を五~一〇〇〇〇本収束した除電繊維群からなる電極1を一定間隔で配列する。

又は、除電繊維群に接着剤(図示しない)を予め浸透、固化させて一本の糸状化した電極1を一定間隔で配列する。

(3) 配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤3を固化させて、電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。

一本の糸状化した電極1を使用する場合は、接着剤3を塗布、乾燥、固化させて、電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。

(4) 接着剤3が固化した後、接着剤3の上から、電極固定用粘着テープ2と同幅かやや幅広の化粧用粘着テープ5を貼り付ける。

(5) 電極1と電極配列用シート4を、位置X・Xで同時に裁断し、かつ所定の長さに1つづつ裁断する。

(6) (1)ないし(5)の製造過程により製造された自己放電式除電器は、次のような構造である。

(a)電極配列用シート5に貼り付けた電極固定用粘着テープ2の表面に、電極1が接着剤3によつて接着されている。

(b)この接着剤3の上から電極固定用粘着テープ2と同幅か又はやや幅広の化粧用粘着テープ5が粘着されている。

(c)なお使用時には、離型紙がらなる電極配列用シート4を剥がして用いる。この場合、電極1は電極固定用粘着テープ2と化粧用粘着テープ5に挟まれた状態となり、化粧用粘着テープ5は接着剤3と接着剤3のない部分では電極1又は電極固定用粘着テープ2に粘着している(化粧用粘着テープ5の幅が広い部分は、電極固定用粘着テープ2には粘着せず、電極1のない部分では機械等の貼付部分に粘着する)。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

物件目録二

「アキレスノンスパーク」カセットタイプ説明書

一、図面の説明

第1図は離型紙からなる電極配列用シート4に電極固定用粘着テープ2を貼着し、電極1を配列した状態を示す正面図、第2図は第1図のものの電極1を接着剤3で電極固定用粘着テープ2に接着固定した状態を示す正面図、第3図は第2図のものを裁断した断面図、第4図は第3図のものから電極配列用シート4を剥がし、これを折り曲げる前の金属カセット6に貼着した状態の断面図、第5図は完成品の断面図である。

図番1は電極でありステンレス繊維、サンダロン糸、カーボン繊維等が用いられる。2は電極固定用粘着テープであり、いわゆるアルミ粘着テープ、電極巻き付け面に合成樹脂をラミネートしたアルミ粘着テープ、両面粘着テープ、導電性両面粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。3は溶剤系の接着剤、4は離型紙からなる電極配列用シートでポリプロピレンラミネート紙、シリコンコート紙等が用いられる。6は金属製のカセットでアルミ、ステンレス等が用いられる。X・Xは裁断位置である。

二、自己放電式除電器の説明

この製品は、下記(1)ないし(5)の製造過程で作られた自己放電式除電器である。

(1) 離型紙からなる電極配列用シート4に、一定間隔をあけて電極固定用粘着テープ2をその粘着剤面で貼り付け固定する。

(2) その上に一本の直径が五~五〇ミクロンの除電繊維を五~一〇〇〇〇本収束した除電繊維群からなる電極1を一定間隔で配列する。

又は、除電繊維群に接着剤(図示しない)を予め浸透、固化させて一本の糸状化した電極1を一定間隔で配列する。

(3) 配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤3を固化させて電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。

一本の糸状化した電極1を使用する場合は、接着剤3を塗布、乾燥、固化させて、電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。

(4) 電極1と電極配列用シート4を、位置X・Xで同時に裁断し、かつ所定の長さに1つづつ裁断する。

(5) 1つづつ裁断したものの電極配列用シート4を剥がし、所定形状の金属製のカセット6の内側に電極固定用粘着テープ2の粘着面で貼りつけたのち、カセット6を折り曲げて締付け完成品とする。

(6) (1)ないし(5)の製造過程により製造された自己放電式除電器は、次のような構造である。

(a)電極固定用粘着テープ2表面に除電用電極1が接着剤3によつて接着されている。

(b)電極固定用粘着テープ2の粘着面と接着剤3の表面が断面U字状に折り曲げられたカセット6により締めつけられると共に、電極固定用粘着テープ2の粘着面にカセット6の一方の内側が貼り付いている。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

物件目録三

「アキレスノンスパーク」金属板タイプ1説明書

一、図面の説明

第1図は離型紙からなる電極配列用シート4に電極固定用粘着テープ2を貼着し、電極1を配列した状態を示す正面図、第2図は第1図のものの電極1を接着剤3で電極固定用粘着テープ2に接着固定した状態を示す正面図、第3図は第2図のものを裁断した場合の断面図、第4図は完成品の断面図である。

図番1は電極であり、ステンレス繊維、サンダロン糸、カーボン繊維等が用いられる。2は電極固定用粘着テープであり、アルミ粘着テープ、電極巻き付け面に合成樹脂をラミネートしたアルミ粘着テープ、両面粘着テープ、導電性両面粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。3は溶剤系の接着剤、4は離型紙からなる電極配列用シートでポリプロピレンラミネート紙、シリコンコート紙等が用いられる。5は化粧用粘着テープでアルミ粘着テープ、合成樹脂基材の粘着テープ、両面粘着テープ、導電性両面粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。7は金属板であり、アルミ、ステンレス等が用いられる。X・Xは、裁断位置である。

二、自己放電式除電器の説明

この製品は、下記(1)ないし(6)の製造過程で作られた自己放電式除電器である。

(1) 離型紙からなる電極配列用シート4に、一定間隔をあけて電極固定用粘着テープ2をその粘着剤面で貼り付けて固定する。

(2) その上に一本の直系が五~五〇ミクロンの除電繊維を五~一〇〇〇〇本収束した除電繊維群からなる電極1を一定間隔で配列する。

又は、除電繊維群に接着剤(図示しない)を予め浸透、固化させて一本の糸状化した電極1を一定間隔で配列する。

(3) 配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤3を固化させて、電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。

一本の糸状化した電極1を使用する場合は、接着剤3を塗布、乾燥、固化させて、電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。

(4) 接着剤3が固化した後、接着剤3の上から電極固定用粘着テープ2と同幅又はやや幅広の化粧用粘着テープ5を貼りつける。

(5) 電極1と電極配列用シート4を、位置X・Xで同時に裁断し、かつ所定の長さに1つづつ裁断する。

(6) 1つづつ截断したものの電極配列用シート4を剥がし、金属板7に貼りつける。

(7) (1)ないし(6)の製造過程により製造された自己放電式除電器は、次のような構造である。

(a)金属板7に貼りつけた電極固定用粘着テープ2の表面に、電極1が接着剤3によつて接着されている。

(b)この接着剤3の上から電極固定用粘着テープ2と同幅又はやや幅広の化粧用粘着テープ5が粘着されている(化粧用粘着テープ7の幅が広い部分は、電極固定用粘着テープ2には粘着せず、電極1のない部分では金属板7に粘着する)。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

物件目録四

「アキレスノンスパーク」金属板タイプ2説明書

一、図面の説明

第1図は離型紙からなる電極配列用シート4と金属板7を両面粘着テープ8によつて相互に貼着し、金属板7の上に電極1を配列した状態を示す正面図、第2図は第1図のものの電極1を接着剤3で金属板7に接着固定した状態を示す正面図、第3図は両面粘着テープ8と電極配列用シート4を剥離前の完成品の断面図である。

図番1は電極であり、ステンレス繊維、サンダロン糸、カーボン繊維等が用いられる。3は溶剤系の接着剤、4は離型紙からなる電極配列用シートでポリプロピレンラミネート紙、シリコンコート紙等が用いられる。5は化粧用粘着テープで、アルミ粘着テープ、合成樹脂基材の粘着テープ、両面粘着テープ、導電性両面粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。7は金属板でアルミ、ステンレス等が用いられる。8は両面粘着テープである。X・Xは裁断位置である。

二、自己放電式除電器の説明

この製品は下記(1)ないし(6)の製造過程で作られた自己放電式除電器である。

(1) 離型紙からなる電極配列用シート4に、一定間隔をあけて金属板7を両面粘着テープ8によつて貼り付けて固定する。

(2) その上に一本の直径が五~五〇ミクロンの除電繊維を五~一〇〇〇〇本収束してなる除電繊維群からなる電極1を一定間隔で配列する。

又は、除電繊維群に予じめ接着剤(図示しない)を浸透、固化させて一本の糸状化した電極1を一定間隔で配列する。

(3) 配列した後、金属板7と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤3を固化させて、電極1と金属板7とを固着する。

一本の糸状化した電極1を使用する場合は、接着剤3を塗布、乾燥、固化させて、電極1と金属板7とを固着する。

(4) 接着剤3が固化した後、接着剤3の上から、金属板7と同幅以下の化粧用粘着テープ5を貼り付ける。

(5) 電極1と電極配列用シート4を位置X・Xで同時に裁断しかつ所定の長さに1つづつ裁断する。

(6) 1つづつ裁断したものから、電極配列用シート4と両面粘着テープ8を外す。

(7) (1)ないし(6)の製造過程により製造された自己放電式 除電器は、次のような構造である。

(a)金属板7の表面に電極1が接着剤3によつて接着されている。

(b)この接着剤3の上から金属板7と同幅以下の化粧用粘着テープ5が粘着されている。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

物件目録五

「アキレスノンスパーク」金属板タイプ3説明書

一、図面の説明

第1図は離型紙からなる電極配列用シート4と、表面に接着剤3を塗布した金属板7を両面粘着テープ8によつて相互に貼着し、金属板7の上に、予め接着剤を含浸させた電極1を配列した状態を示す正面図、第2図は両面粘着テープ8と電極配列用シート4を剥離前の完成品の断面図である。

図番1は電極であり、ステンレス繊維、サンダロン糸、カーボン繊維等が用いられる。3は溶剤系の接着剤、4は離型紙からなる電極配列用シートでポリプロピレンラミネート紙、シリコンコート紙等が用いられる。5は化粧用粘着テープで、アルミ粘着テープ、合成樹脂基材の粘着テープ、両面粘着テープ、導電性両面粘着テープ等が用いられるが、アルミ粘着テープを用いたものを図示している。7は金属板でアルミ、ステンレス等が用いられる。8は両面粘着テープである。

二、自己放電式除電器の説明

この製品は、下記(1)ない七(6)の製造過程で作られた自己放電式除電器である。

(1) 離型紙からなる電極配列用シート4に、予め接着剤3を均一に塗布して乾燥した金属板7を、一定間隔をあけて両面粘着テープ8によつて取り付けて固定する。

(2) その上に1本の直径が五~五〇ミクロンの除電繊維を五~一〇〇〇〇本収束し、接着剤(図示しない)を浸透、固化させて1本の糸状化した電極1を一定間隔で配列する。

(3) 配列した後、金属板7と電極1の上から溶剤を塗布し、固化した接着剤3と、電極1に浸透された接着剤を再活性化して両者を接着し、再びこれを乾燥、固化する。

(4) 接着剤3が固化した後、電極1と接着剤3の上から金属板7と同幅以下の化粧用粘着テープ5を貼りつける。

(5) 電極1と電極配列用シート4を位置X・Xで同時に裁断し、かつ所定の長さに1つづつ裁断する。

(6) 1つづつ裁断したものから、電極配列用シート4と両面粘着テープ8を外す。

(7) (1)ないし(6)の製造過程により製造された自己放電式 除電器は、次のような構造である。

(a)金属板7の表面に電極1が接着剤3と電極1に浸透された接着剤によつて接着されている。

(b)この電極1と接着剤3の上から金属板7と同幅以下の化粧用粘着テープ5が粘着されている。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

特許公報

〈省略〉

特許法第64条の規定による補正の掲載

〈省略〉

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